本ブログをご覧いただいている皆様、こんにちは。事業開発を担当している淺野と申します。今回のブログではデジタルヘルスやヘルステックと総称されるITを活用した医療系スタートアップを一枚の図にまとめたマップでご紹介したいと思います。
■カオスマップとは / その役割とは
カオスマップとは、ベンチャー関係者なら一度は見たことのある「ロゴが並べられた一枚の図」を指します。社内資料作成などで使っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
起源は、もともとAdtech業界のカオスなスタートアップ/プロダクト乱立状況を整理し図解するために日本人マーケターの方が考案したものとも言われています。サブカテゴリーごとの関係性が整理され業界の状況を俯瞰しやすい便利なツールです。英語では「Landscape」や「Industry Map」と呼ばれていることが多いかと思います。
更新を重ねていくことによって、サブカテゴリーごとのトレンドを追うことができますが、日本では今まで存在していませんでした。2017年6月に筆者が作成したものを第一弾とし、今回version 2を作成しました。
■マップ整理の考え方
以下の縦軸・横軸の考え方でマッピングの配置を行っております。
・横軸: 左サイドは「医療のアウトカムにフォーカス」、逆の右サイドは「医療のコストにフォーカス」
・縦軸:上部は医療に対して「支払う立場」である「患者/消費者」もしくは「雇用主/健保」、下部は医療を「提供する立場」である「ライフサイエンス産業」「医療従事者」
おおもとのグループ分けの軸は、2016年にSilicon Valley Bankが作成したU.Sの『Digital Health Landscape』※1を参考にしており、それを日本市場に合わせた形で作成しています。
またスタートアップ選定の基準は以下の3つを満たすこととしています。
・創業10年以内(2007年以降の創業)
・独立系(上場企業の子会社は対象外)
・未上場
原則プロダクト名を社名より優先して表記しており、複数のカテゴリーに属すケースもあります。このマップに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標であり、筆者個人の把握できている限りで作成しているため情報の網羅性/正確性には一定の限界がありますことご了承下さい。
■医療者による起業トレンド
昨今、医師による起業が増えてきていると感じていましたが、このマップ上でも確かめて見たいと思います。「医師CEO」は赤で、「コメディカルCEO」は緑で印を付けてみるとこのようになります。
筆者の方では35社を確認しています(会社とプロダクトとの重複を除いて)。
やはり「患者と医療者の間」に立つサービスや、臨床現場で活用されるサービスでの創業が多く、医療者のみが知っている「現場のニーズ」に基づくサービス設計を各社とも試行錯誤されています。
一方で、創業3年以内(2015年以降)だけを抜き出すとこのようになります。
全領域で創業されているわけではなく、以下のカテゴリーでの起業が減っています。
「遺伝子検査」
「医療連携/地域包括ケア」
「健康経営/EAP」「データヘルス」「福利厚生」
筆者の方では22社を確認しています(会社とプロダクトとの重複を除いて)。
35社確認されている医療者によるスタートアップのうち、3年以内の起業が22社となり、6割以上を占めます。やはり医療者による起業は近年増えていることがわかります。
日本におけるデジタルヘルスも、エビデンスや臨床現場のインサイトを前提とした事業が増えてきていると言えそうです。
■JOMDDが果たせる役割
JOMDDは日本発の医療Innovationを世界に届けることを目指して日々活動しています。弊社代表の内田が日頃から常に発信していることですが、InnovationをInvention+Implementationに分解できるとした場合に、日本ではImplementationが上手く行かずInvention止まりになっている医療技術が数多く存在します。
我々は「ハンズオン」をキーワードに、特許戦略、薬事、資金調達、海外戦略など立ち上げフェーズの困難なプロセスを伴走するインキュベーターであることに誇りをもっています。これらは一見地味ではありますが医療技術の事業化において避けては通れない道のりです。手前味噌になりますが、JOMDDはそれを乗り越えることができるエキスパートによって構成された稀有なチームです。
これからデジタルヘルスも薬事規制の中で事業を行うケースが増えてきますし、医療機器業界もIT / IoTへの対応が進みます。JOMDDにお寄せ頂く期待は日々大きくなってきていると感じています。JOMDDの知見/経験はデジタルヘルスでも大いに活かせると考えています。
■今回、更新しての感想
作成した感想としては半年も立たずに多くのデジタルヘルス企業が存在感を高めて活動していることに驚いています。少しずつですが患者や医療現場にこういったサービスが浸透しつつ有るのではないでしょうか。ロゴのマッピングを一つずつしていく中で、こんなに多くのプレイヤーが日本の医療のクオリティ・コスト・アクセスにコミットしていること自体は確実に明るい話題であると考えています。
※1: https://www.slideshare.net/SVBFinancial/svb-digital-health-report-2016