みなさん、こんにちは。
JOMDDで経営企画と事業開発全般を担当している石倉です。
毎年1月~4月は、国内外で関連学会があるため、弊社もインキュベートした案件を海外の医師や医療機器メーカーに紹介する日々を過ごしています。
一般的に事業計画を立案する際は、顧客や競争優位性といった市場内の要素を重点的に検討する必要がありますが、医療製品の事業計画では、さらに外部要因が自社事業にもたらす影響(規制、M&Aマーケット)をマクロ的な視点から見ていく必要もあります。そのため、前回の寄稿では、米国で近年起こっている環境の変化とそれに伴って生まれてきたデジタルヘルス市場についてご紹介しました。
今回は、医療機器の事業計画を立案する際の鍵となる要素・マイルストーンについてご紹介します。
■医療機器の開発プロセス
一般的に、医療機器の開発プロセスは以下のように各ステージを経て事業化されます。医薬品ほどではありませんが、それでも市場に出る前に長い時間を要する製品もあるため、開発ステージの早期で出口戦略までのグランドデザインを描くことが重要になります。
したがって、医療機器の事業計画では少なくとも以下の7つのポイントが考慮されている必要があります。この中でも、上記の図中の関門でお示ししたように、コンセプトの証明(POC取得)や、薬事戦略(治験プロトコールのデザイン・販売承認取得)、保険償還戦略は、それぞれに精通したコンサルタントが存在し、高い専門性・経験が必要とされる分野になります。
■医療機器開発の進捗と事業価値
上記のように、医療機器を開発していく上では、市場に出る前に幾つかの鍵となるマイルストーンがあります。そして、これらのマイルストーンを一つずつクリアしていくことで、事業価値は階段状に上昇していきます。(下図参照)
一般的なサービス事業やIT事業であれば、もう少し右肩上がりのカーブを描いていくケースが多いかと思いますが、医療機器(医薬品も含む)は、開発ステージに応じて事業リスクが大きく変わるため、マイルストーンを達成するために資金使途を積み上げておく必要があり、それらを踏まえた資本政策を立てる必要があります。資金調達をする際にこの資金使途を見誤ると、あと少しでマイルストーンを達成して事業価値を上げることができるというタイミングの前に、外部からの資金調達が必要となるという結果になりかねず、実際に最近でもそういったケースが見られます。
■結びに
このように、医療機器事業においては、幾つかのマイルストーンを早い段階から見積もっておく必要があり、綿密なプランニングが必要とされます。もっとも、臨床ニーズ・コンセプト→プロトタイプの作製・動物実験、実験結果から再度プロトタイプを改良→再度動物実験、という連続作業は、巷で採用されているリーン・スタートアップの考え方と同様に、いかに速く仮説検証・PDCAサイクルを回すのか、というアプローチを取ることが不可欠となります。
ただし、そのPDCAサイクルと同時並行で薬事戦略等の出口側を具体的に練っていく必要があるため、この点が当業界特異的と言っても良いかもしれません。
今回は、ここまで医療機器の事業計画を立案する際の鍵となる要素・マイルストーンについてご紹介してきましたが、次回以降は、これら一つ一つのマイルストーンについてさらに具体的に寄稿していきたいと思います。
それではまた次回。