皆さん、はじめまして。JOMDDで主にIT関連の医療機器案件を担当している虞都(ぐと)です。
この度日本医療機器開発機構(JOMDD)で、コーポレートブログを始めることになり、最初の投稿を担当することになりました。
このブログでは、主に医療機器に関連した話題を取り扱っていく予定ですが、日本医療機器開発機構なんて堅苦しい会社が医療機器なんていうこれまた堅苦しそうな話題を扱うというだけでももう拒否反応を起こされそう!ということで、このブログでは、医療機器に関する基本的な知識・情報だけでなく、医療業界の動向や海外の動き、時事ネタを織り交ぜながら、初心者にもわかりやすく、業界の方々にも新しい気づきや発見を提供できるようなブログにしていきたいと思っています。
それでは、第1回の記事は、題名にあるとおり「医療機器産業」を題材にお送りしていきます。
■医療機器の定義
医療機器産業を語るには、まず最初に医療機器とは何か?ということを明確にしておく必要があります。
医療機器とは、先日改正された薬事法(医薬品医療機器等法第2条第4項)によると、「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であって、政令で定めるものをいいます。」と定義されていますが、ちょっとわかりにくい…という方には、こちらのページで簡潔にまとめられているのでオススメです。
上記のリンク先にもあるとおり、医療機器は、メス、人工呼吸器、X線CTやペースメーカ、人工関節、人工透析装置、内視鏡など多種多様な製品群に分かれており、身近なものでは、コンタクトレンズや補聴器、さらには血圧計、歯に被せる金属、マッサージ器が医療機器として取り扱われ、種類数にして30~50万とも言われています。
特に、その中でも大別すると、治療機器(例:メスやカテーテル、ペースメーカ等)と診断機器(例:X線CTやMRI、超音波診断装置等)の2つに分けることができ、前者は、治療の際に人体に直接接触することによって用いられるものであり、後者は、人体の状態をマクロ・ミクロに観察するために用いられるものになります。
■全世界の医療機器市場
次に、全世界の医療機器市場を見ていきたいと思います。全世界における医療機器の市場規模は2013年で3,278億ドル(年成長率約6.5%)となっており、医薬品(2011年:9,530億ドル)や家電(2011年:5,530億ドル)よりも小さいものの、安定的に高い成長率を維持しており、今後も市場の拡大が見込まれています。
引用元:経済産業省,「経済産業省における医療機器産業政策について」,平成26年11月,経済産業省商務情報政策局 医療・福祉機器産業室
にもかかわらず、下記の主要医療機器メーカーの売上ランキングを見ると、製造業が強いと言われている日本企業が下位に沈んでいるという意外な結果になっています。なぜ?という方も多いかと思いますが、その理由についてはまた後日別の記事で考察をご紹介させていただきたいと思っています。
引用元:日本政策投資銀行,「医療機器クラスター形成に向けた地域の動向」
■日本の医療機器市場と業界動向
最後に、日本国内における医療機器市場と業界全体の動向を簡単に紹介したいと思います。2013年度の日本国内の医療機器市場は約2.7兆円となり、過去最大を更新しました。それ以前も以下のグラフのとおり、安定的な需要に支えられ、右肩上がりの推移となっています。
引用元:経済産業省,「経済産業省における医療機器産業政策について」,平成26年11月,経済産業省商務情報政策局 医療・福祉機器産業室
一方で、上記でご紹介した主要医療機器メーカーの売上ランキングのとおり、日本の医療機器メーカーは世界的には下位に甘んじていますが、その現状が以下の医療機器分野における貿易収支の赤字額(約7,000億円)にも反映されていると言っても過言ではないかもしれません。それだけ、日本の医療機器産業は家電や自動車産業と比べ、後塵を拝してきたのです。
■まとめ
このように、医療機器産業の概要を簡潔にまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?単に医療機器と言っても、実際には治療・診断、対象疾患、侵襲度、海外・国内などの切り口によって見方が大きく変わってくる特殊な産業ですし、一概に製造業とは言えない非常に奥深い性質を持っている業界でもあります。さらには、アベノミクスの成長戦略にも数えられているだけでなく、新規参入企業が続出している分野である点において、政治と経済の両面からバックアップを受けている数少ない領域と言えます。
確かに客観的に考えると、家電・自動車・情報通信機器関連企業の収益が悪化している状況下において、医療機器こそが日本が誇る技術力を活かせる最後の砦なのかもしれません。しかし、これまで数十年に渡り、日本を含む世界中の医療機器市場を席巻してきた海外の医療機器メーカーに立ち向かう産業に育てるためには、戦後の自動車業界の成長に匹敵する努力と時間が必要になると思います。
その中で、1社でも1人でも医療機器産業に貢献できるプレイヤーを増やすべく、このブログを通して日本医療機器開発機構(JOMDD)の知識・情報をご提供させていただき、一緒に医療機器業界を盛り上げていければと思っています。(近日中に、医療機器開発の全体像についてもご紹介予定)
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